議 事 録


■第154回国会 財政金融委員会 (平成14年4月4日)


・委員長(山下八洲夫君) 
 財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
・山下英利君 
 自由民主党の山下でございます。
 通貨及び金融等に関する日本銀行からいただいた御報告に関連いたしまして質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 今、正にデフレ経済の中で経済が大変低迷している、これを一刻も早く立ち上げなければいけないという大変な至上命題の中で努力をしているわけでございますけれども、日本銀行から都度御報告をいただいております報告書を拝見しておりますと、非常に環境は厳しいというトーンは十分うかがわれるのでございます。しかしながら、この三月、一昨日ですか、発表されました短観を見ますと、報道等によりますと、大分底値感といいますか、落ち着きが見られるようになってきたという種々の計数も発表されているようであります。
 しかしながら、今このデフレの環境の中では、一朝一夕に上向いてくると言えるような環境ではないと私は思っておる次第であります。確かに、空売りの規制とか、それから米国の経済が底値を脱して回復基調に上がったというふうな発表を受けて、株価も期待感を持って落ち着きを若干取り戻しているというふうなことが目にされるわけですけれども、日本銀行御当局としては、この三月の短観の状況、これが十二月の時点とフラットであったと。市場はもう少し出目が出るのではないかなと予測していた部分もありますけれども、少なくとも十二月よりは悪化は止まったというところを踏まえまして、今の日本の景気のこれからの先行きをどう見ていらっしゃるか、そしてこの米国の景気回復が実際日本の景気に及ぼす影響、これを教えていただきたいと思います。
 確かに、在庫調整が大分進んで、これからそれが設備投資に本当に向いていくのか、そのためには何が必要なのか。そしてこの下げ止まり感が確かに大企業ではその傾向は出てきたという中で、やはりまだ中小企業の段階においては非常に景気の低迷感、景気の悪さ、これの印象は顕著であります。そのところを踏まえまして、日銀御当局から御答弁をいただきたいと思います。
・参考人(速水優君) 
 お答えする前に、皆様、御多忙の中をこの日銀半期報のためにこういう場所を、討議の席を設けてくだすったことを厚く御礼申し上げます。
 御質問の四月一日に発表いたしました短観でございますが、私ども大体予想していたような線、数字が出てきたんですが、景気の現状につきましては、設備投資を始めとする国内最終需要が弱めの動きを続けております。家計の雇用・所得環境も厳しさを増している。一方で、米国や東アジアなどの海外経済の回復に向けた動きについては一段とはっきりしてきておりまして、このような海外経済の動向に加えて、為替の円安の影響もあって我が国の輸出は下げ止まりつつあると思います。在庫調整の方も一段と進んできておりますし、生産の減少テンポもかなり緩やかになってきていると思います。今週初めに公表した短観でも、こうした経済の現状を示すものであったと思います。
 当面、前回と大企業、製造業者の見通しなどは横ばいでございましたけれども、これから先についてはかなり良くなった数値が出ておりましたし、その辺のところは私どもの感じと大体似ているなというふうに思いました。
・山下英利君 
 これからの先行きはどのように御覧になっていらっしゃいますか。
・参考人(速水優君) 
 景気の先行きにつきましては、まだはっきり申せませんけれども、アメリカの方もどれぐらいのスピードで良くなっていくかによりますし、国内の方でも今いろいろ手を打たれ、構造改革がどれぐらいのスピードで進んでいくかということも分かりませんので、余りはっきりした見通しを持っているわけではありませんけれども、製造業の方については大体底を打って、設備投資の方も増えていくんじゃないかというふうに思っております。生産の方は少しずつ伸びていくように思いますし、ただ、これから新しく日本が、地方を含めてかなり空洞化が行われておりますが、そういうところへ新しい産業が興っていくか、特に非製造業、サービス産業などで新しいものがどんどんできていって、製造業においても付加価値の高いものがこの機会に作られていって、そういうものがこの経済の成長を支えていくと。
 いずれにしましても、民間の需要が、企業及び家計の需要が出てこない限り経済は伸びていきませんし、それがないとデフレも克服ができませんし、経済が正常化していくのはそういった過程を通っていく必要があるというふうに思います。その辺のタイミング、外需の方は外のこともありますからはっきり言えませんけれども、そういうことをすべて含めて考えてみましても、この辺で底を打って年の後半から少し上がっていけばいいなという感じがいたしております。
・山下英利君 
 どうもありがとうございます。
 今のこのデフレを阻止するということがもう終始一致した目標なのでありますけれども、ただ単に金融政策だけではなくて、要するに総合的なデフレ対策、これを同時並行的に打っていかなければいけない、正にその中で金融政策というのが大変重要な位置を占めていると、私はそのように理解をしている次第なのでありますが、この景気回復というのはすなわち、産業構造の調整とそれからフローのデフレを止めるということ、これが同時に進んでいかなければいけない、しかし一方で、そのフローのデフレを止めるということは景気も刺激していかなければいけないと。正にいろんな意味での言ってみれば二律背反するようなことを進めていかなきゃいけない局面もあろうかと、私はそのように思っています。
 そして、このフローのデフレが止まらなければ、ストックのデフレを止めるには至らないと。まず、フローの方を何とかしなけりゃいかぬと、そのように思います。そして、それは今盛んに言われている金融機関のいわゆる金融仲介機能が低下している、不良債権の処理の問題においても。すなわち、フローのデフレが止まらないからますます金融は信用が収縮している、その悪循環の中に入っていると、そういうふうに私は思っているわけであります。
 その総合的なデフレ対策の中で、日銀の金融政策として今盛んに言われているインフレターゲティングについて御質問をさせていただきたいと、そのように思っております。
 物価水準目標を設定をして、今緩和の政策を取っていただいている。言ってみれば、市中はじゃぶじゃぶの状態になっているというわけです。昔であれば、もうこれだけじゃぶじゃぶの状態にすればインフレ懸念が出てきて金利が上がってくる、物価も上がってくるというふうに言われたわけですけれども、全くそれが起きない。なぜ起きないかというと、やはり設備の投資の需要がない、資金需要がないから実際にじゃぶじゃぶになったお金が市中、いわゆる中小の企業に回らない、実際の実需に基づいた資金の貸出しにつながらないというふうなところがあろうかと思っています。
 しかしながら、その日銀の緩和政策によって息をつないでいるという部分も私はあると思っております。そして、このインフレに対して、今まで私たちが全く経験したことのない、今度はデフレの状況からインフレの状況へ持っていこうという流れが、このインフレターゲティングの一つの趣旨であろうと思っています。
 物価水準をまず目標にして日銀が資金の緩和政策を取る中で、インフレ率といった数値目標設定によるインフレターゲティングについて、日銀の御当局はどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
 ちなみに、諸外国の中央銀行は、インフレターゲットの政策を採用しているところもございます。そんな中で、日本銀行としてこの政策についてのお考えをお聞かせください。
・参考人(速水優君) 
 インフレターゲティングという言葉は、昨年来かなり広く使われてきておるわけでございまして、私どももこの問題は十分頭の中に入れて考えてきたつもりでございます。海外でもございますけれども、やっぱりこれはインフレを抑えるためにインフレのターゲットを作るところが大部分であって、デフレの状態の中でインフレのターゲットを決めていくというのは今まで実例がないと言ってもいいと思います。
 日本銀行は、既に昨年、緩和政策をゼロ金利から更に広めて量的緩和に切り替えましたときに、CPIの上昇率が安定的に〇%以上となるまで現在の思い切った金融緩和の枠組みを続けるということを宣言いたしまして、デフレ克服に向けた強い意思を表明したつもりでございます。また、このコミットメントの下で、市場に対して極めて潤沢な資金供給を行ってきております。
 この結果、短期金利は〇%まで低下しておりまして、いわゆるマネタリーベースといいますか、日本銀行から出ていく資金は、流動性は、二月、三月でも前年比三割に近い伸びを示していたわけでございます。現在はこうした金融緩和の効果が経済全体になかなか浸透していかないのが現状であると思います。
 こうした情勢を踏まえますと、現段階ではターゲットを設定しても人々の信頼が得られない可能性が高うございますし、むしろ先ほど申し上げましたように、さっき申し上げたコミットメントの方が分かりやすくてまた効果的であるというふうに思います。
 先ほども申し上げましたが、物価の方は経済活動の体温と考えるべきであって、様々な経済現象の結果として表われてくるもので、デフレ脱却のためには、やはり経済全体の基礎体力といいますか、成長があって初めて物価は上がっていくんだろうと思います。そのためにも、このコミットメントでゼロを超えるところまで消費者物価が上がっていくことが第一の目標であるというふうに思っております。
・山下英利君 
 ありがとうございました。
 その第一の目標のコミットメント、これに基づいて今の経済環境をごらんいただいて、しかし先ほども私が申し上げましたように、総合的デフレ対策の中での金融政策という位置付けを十分御理解をいただいて、じゃ、二の矢三の矢というときには具体的な目標と、そしてその目標に対しては、これは日本銀行がすべて責任を負うというんではなくて、本当に種々の環境がそろわなければその目標達成には届かないという国民の理解、これも大分深まってきていると私は思っておりますので、前向きにと申しますか、ちゅうちょなくやはり日銀として金融政策を展開していただきたいと、そのように思っております。
 それで、次の質問なんでございますけれども、先ほどから総裁のお話の中に為替という話が出てまいりました。正に今これだけ、昨年十二月の状況から今三月の状況になって、やっぱり大きくコメントの中でも出てくるのが米国経済の回復であると。やはり貿易によって、日本の輸出によって日本の経済に対する回復というものに対する期待感、これが本当に大きいんだなと、そのように思います。
 その中で、やはり日本が今直面しているのが為替の環境であります。
 為替というのは、もう昔からやはり日本にとっての大きな経済の主たる要因でありましたけれども、今の現在の日本が置かれている為替の環境というのは、ドルだけではなくて、ここに元という新しい要素が入ってきています。日本の経済が空洞化していく、そしてまた、はたまた安いものが入ってくる。これも単純に労働賃金の格差だけでなくて、やはり為替の要因というのは大変大きいんではないか。そして今、中国の元は正にドルにリンクした特別な相場形態になっております。
 日銀御当局として、ドルと円と元という、この三つの通貨の関係を踏まえたこれからの為替の日本経済に及ぼす影響、これについてお考えをお聞かせください。
・参考人(藤原作彌君) 
 お許しを得て私から答弁させていただきます。
 先生御指摘のとおり、昨年来、円相場は各国通貨、元も含めまして各国通貨に対して円安水準で推移しております。これは、日本経済やそれから日本の金融システムに対する厳しい見方が続いているということが一つ、それから、反面、アメリカなど海外の経済の回復に向けた動きがはっきりしてきているという要因などを反映した動きだと解釈しております。このような海外経済や為替相場の動きは、輸出環境の改善という形で足下の、現下の輸出数量の下げ止まり傾向や企業収益の下支えに寄与しているものと考えます。
 日本銀行としましては、為替相場の、経済のファンダメンタルズを反映した、安定的に推移することが望ましいと基本的に考えておりまして、そういう意味で、今後とも為替相場の動向とその影響については注意深く注視してまいりたいと存じます。
・山下英利君 
 ありがとうございました。
 そういった意味で、金融の正に中心であります中央銀行、日本銀行の置かれている立場というのが金融政策の中で非常に明確なんでありますけれども、今、副総裁御答弁いただいたように、為替というものが日本の経済環境の中で非常に重要な位置を占めている。したがって、日本の国内の中だけの金融政策でなく、やはり為替の政策というものも併せた通貨当局の政策の実行というものが、非常に今度タイムリー、時間の勝負というものを考えた場合には大事ではないかなと私は思っておるわけでございます。
 そこで、私の質問は、金融政策、それから為替の政策、これを連動させる。今だれがどういう形でこれを動かすかというところに立ち返ってみますと、財務省、それから日銀、それぞれのお考えあろうかと思いますので、財務省、日銀、それぞれにお聞かせをいただきたいと思います。
・参考人(藤原作彌君) 
 まず、私の方からお答えさせていただきます。
 日本銀行の任務は金融政策でございますけれども、現在の日本銀行法では、金融政策の目的を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」というふうに規定しております。もちろん、金融政策と申しましても、為替の相場の変動など経済や物価に様々な影響を与えると同時に、金融政策の波及効果の重要なルートの一つでもあるわけです。
 日本銀行としましては、引き続き、為替相場変動の影響にも十分に留意した上で、大本の金融政策運営を行ってまいりたいと考えております。
・副大臣(尾辻秀久君) 
 財務省としてお答え申し上げます。
 まず、金融政策について申し上げますと、お話しのように、政府、日銀が緊密な連携いたしましてその対策に取り組んでいくことが重要である、これはもうお話しのとおりであります。
 一方、為替相場でありますけれども、この為替相場は金融政策によって影響を受けることも事実でありますけれども、とはいえ、為替相場そのものだけについて言いますと、私どもの立場で申し上げますと、人為的な政策誘導を行う考えはございません、こういうお答えになってしまいます。
 ただ、申し上げましたように、金融政策の影響があることは事実でありますから、為替の問題と金融政策とはその時々の状況に応じて検討されるべき問題である、このように考えております。
・山下英利君 
 ありがとうございます。
 為替については、実際の貿易における実需とそれ以外のいわゆる資本の流出入、こういった面で最近やはり大変大きい要素になっているのが、今の株価の問題にも出てきますとおり、やはり外人投資家からの積極的な買いであり売りであり、そういった市場混乱、その中で為替も動くというようなことが顕著であります。それをして人為的な介入をしないという場合に、それをどうとらえるか、これはまたいろいろ御意見があろうかと思います。そして、日銀の通貨当局としての金融政策にそれがマイナスの影響になるといったときに、御当局が実際それを回避するという手だてというのはやはり必要ではないかなと私は思っておる次第であります。
 日銀法の改正等、またいろいろ議論をされておりますけれども、その中にあって、やっぱり外債の話、それから有価証券等、そういったいわゆる資本市場取引における日銀の金融政策を、為替政策というところからどうやって反映していくのかというのは大きな、今の経済環境における、特に金融面での課題かなと、私はそのように思います。
 そこで、追加で質問をさせていただきたいと思いますけれども、そういったデフレ政策の中での金融政策あるいは為替の政策という話をさせていただきました。総合的にとらえて、総合的な今の日本の国の政策運営の中で日銀の在り方です、これはどういう在り方であるべきか。私はイメージとして、例えばアメリカであれば連邦準備銀行、FRB、あるいはドイツのブンデスバンク、あるいはバンク・オブ・イングランド、そういった中央銀行といろいろ比較をいたしまして、今の日銀のあるべき姿というのはどう日銀の御当局として考えておられるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
・参考人(速水優君) 
 新しい日銀法の下で、特に独立性と、もう一つは透明性といいますか、アカウンタビリティー、説明責任と、この二つのことが新しい日銀法の二つの柱だと思っております。
 日本銀行の目標は、通貨を発行して、安定した通貨を通じて経済の安定的な成長を図るということが私どもの責任であると思います。そして、現在の日本銀行の独立性というものは、政策運営の透明性とともに、世界的な大きな流れを背景にして、様々な検討を経て抜本的に改正されたものであって、非常に立派な中央銀行制度をお作りいただいたものと考えております。現在最も重要なことは、新しい日銀法にうたわれた中央銀行制度の理念をしっかり定着させていくことだと思っております。日本銀行としましては、今後とも、そのために全力を挙げたいと思っております。
 政府との関係について申し上げますと、日本銀行は、日銀法の規定に従いまして、金融政策決定会合などの機会を通じて政府との連絡を密にして、十分意思疎通を図るように努めております。デフレ脱却という目標や決意につきましても、日本銀行と政府との間で十分共有されていると考えております。
 日本銀行としましては、政府と十分な意思疎通に努めて、その上で、独立した中央銀行として政策委員会で討議を尽くして、自らの責任と判断で政策決定を行うことが求められているものというふうに認識しております。
・山下英利君 
 ありがとうございました。
 同じ質問になりますけれども、この日銀の独立した金融当局、金融の元締という考え方について、財務省御当局はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
・副大臣(尾辻秀久君) 
 日銀法の三条と四条のことになろうかと思います。
 三条において日銀の自主性は尊重されることになっておりますし、また四条におきましては、今お話しになっておられるように、金融政策というのは経済政策の一環でありますから、政府の経済政策が整合的なものにならなきゃいけない、そのためには常に日本銀行も政府と連絡を密にする必要がある、こういうふうに決められておるところでございます。
 したがって、この三条と四条の兼ね合いになろうかと思いますけれども、私どもの財務省としてお答えさせていただくといたしますと、そのことを十分わきまえて、今後とも政府、日銀の間で一層緊密に連絡を取り合って、今日お話しのデフレ克服に向けても一層頑張っていきたい、このように考えております。
・山下英利君 
 ありがとうございました。
 日銀が独立した中央銀行という中にあって、国の政策の中の重要な位置を占める、その連携という和をきちっと守って、そして全体的な政策の効果を出していく、これが一番重要ではないかなと、私はそのように思っております。
 質問としてはいたしませんけれども、今一番言われているのがリスクの管理であります。これは、システミックリスク、クレジットのリスク、信用リスクですね、これは盛んに議論をされております。その中で、金融の、中央銀行としてリスクをどう考えるか、そして金融庁としてまた個別のリスクをどう考えるか、ここのところは整合性が取られているということが非常に必要ではないかなと私は思っております。
 全体的に、例えばBISの基準にしても、それは全体の流れです。ですけれども、個別のいわゆる中小、いわゆる市中の金融貸出し、これの積み上げがその金融機関のBISの要求水準を満たすかどうかという流れになります。したがいまして、マクロの部分とミクロの部分がきっちりと平仄を合わせておきませんと、マクロだけ決まってしまってそこでミクロにしわが寄るということは、大変日本の経済に対してマイナスであると、私はそのように思っておりますので、是非、今後とも連携をよろしくお願いを申し上げます。
 私の質問は以上にとどめさせていただきます。ちょっと時間は早いですけれども、これで終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。




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