議 事 録


■第164回国会 参議院本会議 (平成18年6月14日)


○議長(扇千景君) 日程第六 健康保険法等の一部を改正する法律案
 日程第七 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長山下英利君。
    ─────────────
   〔山下英利君登壇、拍手〕
○山下英利君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、健康保険法等の一部を改正する法律案は、医療保険制度の将来にわたる持続的かつ安定的な運営を確保するため、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、保険者の再編統合等の措置を講じようとするものであります。
 次に、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案は、良質な医療を提供する体制を確立するため、医療に関する情報提供の推進、医療安全確保体制の整備、医療計画制度の拡充強化等を通じた医療提供体制の確保の推進、医療従事者の確保及び資質の向上等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、両法律案を一括して審査し、医療費適正化の在り方、高齢者医療制度創設の意義と問題点、療養病床再編の是非、保健事業の今後の方向性、産科、小児科等の医師不足問題に対する認識と取組、医療安全・医療事故対策の必要性等について質疑を行うとともに、参考人から意見を聴取いたしました。さらに、北海道に委員を派遣し、地方公聴会を開催いたしましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑終局を採決で決した後、討論に入りましたところ、民主党・新緑風会を代表して円より子理事より両法律案に反対、自由民主党及び公明党を代表して中村博彦理事より両法律案に賛成、日本共産党を代表して小池晃委員より両法律案に反対、社会民主党・護憲連合を代表して福島みずほ委員より両法律案に反対する旨の意見がそれぞれ述べられました。
 討論を終局し、順次採決の結果、両法律案はいずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両法律案に対し附帯決議が付されております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(扇千景君) 両案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。足立信也君。
   〔足立信也君登壇、拍手〕
○足立信也君 民主党の足立信也です。
 私は、会派を代表し、議題となりました二法案に反対する立場から討論を行います。
 昨日、理事会の合意もないまま、委員長から審議の終局が提案され、二法案は委員会で可決されました。審議時間は三十二時間、多くの国民から非難される中、強行採決された衆議院厚生労働委員会の審議時間にも及びませんでした。
 政省令事項は、介護保険法改正案の二百三十二、障害者自立支援法の二百一に比較しても格段に多い四百四十項目に上ります。その政省令事項に確たる方向性を示すためには、開かれた審議を国会の場で行う義務が我々政治家にはあります。委員長の職権濫用に断固抗議いたします。
 高齢化が進展する一方で、厳しい財政状況の下、保健、医療、介護を効率的、安定的に国民に供給していくにはどのようにすればいいのか。これを内政上の最重要課題とするOECD加盟国は、一昨年五月に保健大臣会合を開き、詳細なデータの収集と分析を行い、「世界の医療制度改革」という本を刊行いたしました。川崎大臣は昨日の委員会で、この「世界の医療制度改革」は読んだことがないと答弁されました。日本国民にとって最大の関心事であるこの重要課題に世界がどのように立ち向かい、反省をし、どんなアクションプランを描いているか、関心すら示さないということはゆゆしき自覚の欠如と断ぜざるを得ません。
 世界一の医療制度と評価され、世界一の健康寿命、平均寿命を達成した今日の日本、これは、医師を始めとする医療従事者と患者、家族との間で培われた確かな信頼関係の中で成し遂げられたものです。しかしながら、最善の医療を受けるのが難しいばかりか、生命すら脅かされるような危険が日常的に生じているのはなぜなのか。八割を超える国民が不満を抱く理由は何なのか。
 今こそ、必ず最善の医療が受けられるという安心、これを国民の心に取り戻さなければなりません。この問題の本質に手を付けないまま、財政的観点からのみ医療費を削ろうとする、これが医療制度改革に対する政府の姿勢であり、このままでは医療が守るべき国民の命を削ることになりかねません。命の値段は削れないのです。
 以下、主な反対の理由を申し上げます。
 まず、健康保険法等の改正案についてです。
 推計を繰り返すたびに下方修正される医療費の将来推計値。政府の推計は、一九九五年から九九年までの五年間の一人当たり医療費の伸びを前提に、人口構成の変化を考慮して推計したとされます。すなわち、高齢者は三・二%、一般は二・一%の伸びということです。
 しかしながら、これには恣意的な補正が加えられ、高齢者〇・九%、一般〇・五%の水増しをしているのです。正に偽装医療費推計値です。この水増しがなければ、二〇二五年度の医療給付費は四十七兆円となり、今回の医療給付費抑制策の成果とほぼ同額となります。根拠のない作り話と言わざるを得ません。
 現行の老人保健制度では、現役世代と高齢世代の費用負担の関係が不明確であること、医療費の支払を実施する市町村と実際の費用を負担する保険者が全く別々であるため、財政運営の責任主体が不明確であること等の批判があります。
 これを受けた今回の提案でも、現役世代は、後期高齢者医療制度への支援金、前期高齢者医療費調整のための納付金、そして、今後、実質的には十数年間も存続することとなった退職者医療制度への拠出金と、結局は三種類の負担金を支払うこととされ、老人保健法の基本的な構造は何ら変わっていません。
 さらに、今回の改正は、現行の老人保健法に基づき、国及び地方公共団体がこれまで担ってきた住民の健康の保持増進を目的とした保健事業を実施する責務を事もあろうに削除してしまいました。
 高齢者医療制度の根幹に医療費適正化計画の策定、実行、評価のプロセスが組み込まれていることが、ある意味、最大の問題点であると言えます。新たな制度は、高齢者にふさわしい医療を適切に提供し、それに要する費用は国民全体が支援するという理念、言い換えれば、高齢者医療を主な標的とし、医療費の適正化イコール医療費の抑制を図るための仕組みとして機能することになるのではないですか。
 高齢者にも原則として若年の現役並みの自己負担と、加えて療養病床における居住費、食費の自己負担を求めるなど、高齢者及び家庭を直撃する内容です。日本銀行の家計の金融資産に関する世論調査によれば、二〇〇〇年以降、二十歳代から七十歳代以上のすべての年代において貯蓄のない世帯が増加しております。高齢者もやはり貯蓄を取り崩すことによって自らの生活と健康をやっと守っているのです。
 一人一人の状態に合わせ、自己決定に基づいたテーラードメディシンが世界共通の言葉となった今日、高齢者にふさわしいという言葉で望む医療が受けられなくなることを断じて容認するわけにはいきません。
 次に、医療法等の改正案についてです。
 世界は、医療費抑制の時代を超えて、評価と説明責任の時代です。医療に対する国民の不満の原因は、情報の非対称、自己決定権が尊重されないこと、相談体制の不備、医療事故並びに死亡原因の究明体制の不備、そして提供されている医療の質に対する客観的評価体制の不備にあります。この一つ一つを解決することが医療の質を高めることにつながり、生命の尊厳と医療を受ける者の自己決定の尊重につながります。
 政府案は、問題点の羅列にすぎず、具体的な解決策が何一つありません。国民の求めている医療は説明する医療です。いやしの医療です。人が人をいやす医療には人材が必要です。日本の医療従事者は明らかに不足しております。医療従事者の責任感と使命感に基づいた献身的な努力のみに頼ることはもう限界に達しています。決定的な崩壊を迎える前に、我々は安心、納得、安全の医療を実現しなければなりません。
 医療、教育は、社会全体にとって共通の財産、すなわち社会的共通資本です。我々の財産である日本の医療が市場原理によって左右されてはなりません。
 今、日本は、希望格差社会とも健康格差社会とも呼ばれています。その共通の財産を享受する機会に格差が生じているのです。医療の世界において結果の不平等を是認し、失敗しても再挑戦の機会があればよいと強弁するわけにはいかないのです。医療における機会の不平等は、多くの場合、再挑戦の機会を奪い、生命をも奪うことを意味します。取り戻すことができないのです。
 人為的に医療費を削減することによって医療の質の低下を招き、人材の確保、離職の防止が困難になり、サービスや革新的医薬品の供給不足に陥ります。これ以上自己負担増加を加えれば、健康格差を助長します。そして、健康格差に対する公的医療費は増大します。これは、冒頭引用いたしましたOECDの「世界の医療制度改革」に記された世界の経験則です。日本はこの轍を踏んではなりません。
 私たち民主党・新緑風会は、我々の財産である日本の医療をすべての国民が効率的に、平等に分かち合える医療改革を目指します。提出された政府案には断固反対することを申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(扇千景君) これにて討論は終局いたしました。
○議長(扇千景君) これより両案を一括して採決をいたします。
 両案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十一  
  賛成            百三十一  
  反対               百  
 よって、両案は可決されました。(拍手)







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