議 事 録


■第161回国会 参議院憲法調査会二院制と
参議院の在り方に関する小委員会
(平成16年11月5日)


○山下英利君
 自由民主党の山下でございます。
 小林参考人には、今日は大変お忙しい中、誠にありがとうございます。
 私もこの臨時国会から憲法調査会そして並びにこの小委員会に参加をさせていただきまして、国会議員として初めて、初めてと言ったらこれは語弊がありますけれども、いわゆる国の基本であります憲法という問題に参加をさせていただいて、大変勉強させていただいているところでありますけれども、まだまだ勉強不足のところがありますので、大変初歩的な質問になるかと思います。
 ただ、今憲法の議論等をいろいろされているのを聞いていましても、やはりまだ国民の中には、この憲法という問題、そして選挙制度という問題が絡んできた今日のお話については、国民の意識というものはどこまで醸成されてきているのかなと、そのようなことも頭にあるわけでございまして、どうかそういった面で、ちょっとこれから質問させていただくことに対しまして的確にお答えをいただけると大変有り難いと思います、的確というのは私自身が理解ができるという意味でございますけれども。
 まず、今お話をいただいた中なんですが、やはり選挙制度というのがこれは民意を反映させると、これはもう国民から選ばれた者が立法府において活動するということでは大変大事だということはもう周知のことなんでありますけれども、その際に、参議院として、じゃどうあるべきかといった場合に、ただ、今度は有権者の投票行動というものも今ちょっとお話をいただきまして、ただ、私自身も経験しておりますけれども、やはり有権者が人で選ぶのか、あるいは党で選ぶのかといったところが、先ほどちょっとお話の中で個人本位、脱政党という方向と、これからの流れの中でどうなっていくのかというところも頭に入れて考えていかなければいけないのかなと、またそういった方向へ持っていくのが本当にいいのかどうかということについて、ちょっとまず小林参考人からお話を伺いたいんですが。
○参考人(小林良彰君)
 まず重要なことは、衆議院との区別化を行うことが私は重要ではないかというふうに思っております。
 それは、二院制の意義がどこにあるかという原点に立ち返ってみれば、やはり衆議院の行う政策形成に対して異なる視点からチェックをするということになります。そうなりますと、現在の衆議院における政党化、これは衆議院が内閣を構成することに大きくかかわっておりますので、政党化ということは避けられない状況だと思いますが、それに対して、それとは離れた視点で選ぶ。恐らく、参議院の任期が六年と長いこと、あるいは同時に半数の入替え制になっているということもそこに趣旨があると思っております。
 その意味では、私は、その第一院とは異なる第二院の存在意義を持つためには、私は、より個人本位の選出で行うことがいいというふうに考えておりますが、一度にそのように、それでは有権者が対応してなるかといえば、恐らくそういうことにはならないというふうに思っております。現実の有権者の投票行動を見ていきますと、衆議院よりは参議院の方がいわゆる政党投票をする可能性というものが低い場合もあります。しかし、党によっては政党本位の選挙になる党もありますし、あるいは個人本位がよりウエートを占める党もあります。
 そこで、先ほど御提案させていただきました選挙制度においては、投票者が個人名を書いてもいいし、あるいはその党であれば特にだれでも構わないと思う場合は政党名を書いてもいいということで、過渡的な場合も含めて、そのいずれにも対応できる。しかし、そういうことをしていく中で徐々に、私は有権者の投票行動が参議院においては政党中心から個人中心の方へ移行していくのではないかということを期待しておりますし、その変化を受け入れることのできる選挙制度の方式ではないかというふうに考えております。
○山下英利君
 ありがとうございます。
 選挙のところからまず入っていってしまったんですけれども、参議院といった場合にいつも言われることは、良識の府であると、あるいはチェック・アンド・バランスということを言われるわけであります。実際にチェック・アンド・バランスを利かせるということによって緩和をしていくという意味においては非常に重要だと思いますし、これは私自身もやっぱり民間の会社にいた経験から考えると、やはりアクセルを踏む部分とブレーキを掛ける部分と、それがあって初めて本質的なところが前へ進んでいくのかなと、そういうふうに思っておりますので、そういった中で、衆参両院を比べたときに、そのチェック・アンド・バランス機能を果たす参議院議員がそういった形で、また全然違う選挙制度で本当に民意を反映できるのかというところというのがやはり一番の関心事になるわけです。
 やはり同じ基盤にあってチェック・アンド・バランスを利かせるということも一つの考え方ではないかなとは思うんですが、その辺はいかがでございますか。
○参考人(小林良彰君)
 同じ選挙制度であれば、特に日本の場合、衆議院選挙がおおむね二年半あるいは三年に一度行われておりますので、衆議院と参議院がそれほど異ならない時期に行われることになります。例えば、直近で言えば、衆議院は昨年の十一月に行われましたし、参議院は今年の七月に行われております。その時期に同じ選挙制度で選出をした場合、両院の構成がほぼ同じになってしまうということはあると思います。また、それは単に結果ではなくて、同じようなタイプの候補者が選ばれるということもあると思います。
 その意味では、民意の反映というのが、これは様々な意味がありますが、例えばそれぞれの地域における多数の意見を反映させるという形の民意の反映もあれば、あるいは全国で見て、少数意見も配慮して、その全国の国民が持っている意見の分布をそのまま院に反映させるということも、これもまた民意の反映の考え方であります。その意味で、私はその両方の民意の反映の仕方をそれぞれの院が持つことこそが実は本来的な意味のチェック・アンド・バランスになるのではないかと思っております。
 それから、少し小選挙区制について言えば、先ほども申し上げたことになって恐縮なんですが、例えばアメリカやイギリスのように様々な社会的な属性によって自分の住む地域のすみ分けをしているところは、それぞれの中が極めてホモジニアスな地域になっておりますので、それぞれにおいて小選挙で自分たちの代表者を選んでもそれほど有権者の分布と議院の構成の間にずれが出ないことになります。
 しかし、日本はそのような社会では少なくともないというふうに思っております。いろいろな意見の人がいろいろな地域に分散して住んでおります。そうしますと、そこで小選挙区を行った場合、どこでも少数意見がこぼれてしまうことになります。このこぼれる少数の比率が極めて小さい場合は話は別になりますが、例えば衆議院における小選挙区制においては死に票の割合が五〇%近くになっております。その場合、当然に有権者全体の意見の分布と院の構成がずれるということもあります。
 そのことを考えれば、第二院である参議院は比例代表という形で有権者全体の意見の分布を反映させるという制度を取ることが、私は御質問の御趣旨である本来的なチェック・アンド・バランスと民意の反映というものを両立させる考えではないかというふうに思います。
○山下英利君
 今のお話を伺っていますと、参議院というのはどちらかというと個人というよりもむしろ政党中心というふうにも聞こえてくるんですけれども、現実的に言えば、今は衆議院の小選挙区に比べて参議院は一人区でも広い選挙区であります。そういった形で、要するに国全体のチェック・アンド・バランスという意味におけば、選挙区は広いほどいいというふうに見えてくるようなところもあるんです。
 そういった場合に、先ほど言ったように国民との距離といったときに、それぞれの地域のことは衆議院、国全体のことは参議院というようなことも極論すれば言われてしまうんではないかと思うんですが、その辺はいかがでございますか。
○参考人(小林良彰君)
 まず、民意の反映というのは、党を通して行うということも可能ですが、個人を通して行うということも可能だと思います。
 例えば、一つの政党であっても様々な意見の議員の方がいらっしゃるというふうに思います。そうしますと、自分はその政党を通す場合でも、こちらの議員を通したい、あるいは別の議員を通したい。同じ党の中でも異なる意見があるとすれば、その党だけではなくて個人も選んで自分の民意を反映させるということがより有権者の民意の反映に近づくことになると思います。
 それからもう一つ、選挙区のサイズのことになりますが、御指摘のとおり、有権者全体の意見の分布を院に反映させるためには、広ければ広いほどそれは反映をさせやすくなります。しかし、その広いという言葉の意味は、いわゆる選挙を行うサイズ、選挙運動を行うサイズという意味ではなくて、選挙の集計をするサイズでございます。したがいまして、選挙区のサイズという中には、選挙の集計をして議席を配分するときの単位のサイズと、現実的に有権者が候補者を選ぶときのサイズと、別であると思います。
 そこで、私の方が御提案をさせていただきました制度においては、選挙区のサイズは都道府県、もちろん北海道とか東京は更に分割するにしても、そのサイズで行って有権者と政治家の人たちの距離が余り離れないようにする。つまり、昔の全国区のようにした場合、やはりこれは特定の組織を持たないと、現実的には選挙をするということは非常に大変なことにネると思います。
 もちろん、現実の参議院選挙においても非拘束式を全国レベルでやっておりますが、これはもうほとんどその実際に出る候補者の方にとっては体力の限界との闘いに近い部分もあるのではないかと思っておりますので、これはよほど知名度がある方でないと、なかなか組織を背景にしないと当選しづらいということがあります。
 そこで、選挙区はその都道府県単位で行うけれども、集計と議席配分は全国で行う、更にそれを都道府県における選挙の実績に応じて議席を割り戻すということになります。したがいまして、選挙区のサイズを考えるときに、一義的にすべてが大きいかすべてが小さいかではなくて、それぞれの持つ良さを併せ持つ制度を提唱させていただいたわけであります。
○山下英利君
 ありがとうございます。
 お話、よく、まあ半分以上は理解できるんですけれども、なぜそういうふうに申し上げるかというと、やはり選挙民の投票行動というものがいま一つ見えないという部分があって、そこから議論を発展させるということに対して私自身も相当苦労をしておるわけなんですけれども、実際、例えば衆議院が中選挙区から小選挙区に変わりましたと。かつては、要するに国全体の風というよりも、むしろ地域の熱というものがその選挙の母体になっていたというところがあるわけですけれども、かえって小選挙区になってしまったがためにその熱というものが薄くなってきたという部分も私は感じておりまして、そうすると、先ほども申し上げたように、有権者の投票におけるインセンティブというのが、前の中選挙区のときから小選挙区に今変わってきていて、それでそれをこう引き上げるために何をしたらいいのかということを、非常に暗中模索の状態にあるということで、それを前提として考えますと、これは長期的には、将来、小林先生がおっしゃっているようなことというのは、参議院の独自性を発揮するための、要するに国民の代表を選ぶということでは一つの在り方かもしれませんけれども、かえって、短期的に見れば、それが投票行動を劣化させてしまうというふうなところのリスクというのはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
○参考人(小林良彰君)
 私は専門が投票行動ですので、むしろ選挙制度よりもそちらの方が話を私にとってはしやすいことになりますが、有権者が投票に行くインセンティブはどのようにして決まっているかということになりますと、最も今支配的な仮説というか理論というのは、R=P×B−C+Dというもので、要するにPというのは接戦の可能性、その選挙区はどの程度競っているのか、それからBというのは出ている候補者の間にどの程度政策の違いがあるのか、それから投票コストを引いて、選挙に行く長期的利益を足すということになりますが、CとDはどのような選挙制度でも余り変わりませんから、選挙制度によってその変化が一番生じるのは接戦の可能性と政党の期待効用差、政策の違いということになると思います。そうしますと、中選挙区制から小選挙区制になって競っている選挙区の数が極端に減っているのは事実であります。
 これは、例えば選挙の直前になりますと、あるいは選挙の日になりますと、メディアが選挙についてのいろいろな報道をすることになりますが、中選挙区制のときは定数四であれば四位と五位、これはどちらがなるかというのはほとんど分からないような状況であります。ところが、小選挙区の場合は一番か二番ということになりますから、多くの選挙区においてそれほど難しくなくなってきています。その意味では、自分の出ている、自分が住んでいる選挙区における接戦の可能性が下がる分だけ投票に行くインセンティブが下がっているというのが衆議院選挙における過去の調査のデータを分析すると結果として出てくることになります。
 私が今回御提案させていただきました投票のインセンティブとは少し意味が違いまして、どういうことかといいますと、定数不均衡というのはもちろんない方がいいと思います。なるべく一票の等価値性というのは保たれるべきだと思います。しかし、同時に、それを有権者が主張するならば投票に行くべきである、来るべきであると思います。投票に来る権利を放棄して一票の等価値性を議論しても、これは意味がないと思います。つまり、あくまでも重要なのは一人の等価値ではなくて、権利を行使された一票の等価値性ということになります。
 したがいまして、今日御提案させていただきました選挙制度というのは、定数不均衡がない代わりに投票率が高い選挙区ほど多くの議員が割り当てられることになります。そのことが、私は有権者がより自分たちの代表を出したいのであれば、まず自分たちが持っている権利をきちんと行使すべきである、その意味において有権者の責任も求める意味の投票のインセンティブがあるのではないかというふうに思っております。
○山下英利君
 ありがとうございました。
 時間も大分迫っておりますので、ちょっと一点お伺いをしたいんですが、今日先生がお配りをいただきましたレジュメの中で、その投票行動、これを見ておりまして、やはり年齢というところが大分高いんですけれども、今の一般国民、これはどういうバックデータでお取りになっていらっしゃるかは存じ上げないんですが、やはり候補者を考えるときに年齢というものをまず優先するという傾向というのは、これを見る限りではかなり読み取れるんですが、やはり経験であるとか、あるいは、要するに若いということだけじゃなくて、要するにそれだけのいろんな経験を積んだということによって出てくるところというのはなかなか有権者の投票行動には結び付かないということを、これは言えるんでしょうかね。
○参考人(小林良彰君)
 本日お配りしました参照2における年齢というのは、有権者の側の年齢ということに……
○山下英利君
 有権者。
○参考人(小林良彰君)
 はい。したがいまして、ここにおける性別、学歴、年齢というのは有権者側が持つ属性ということになります。
 ただし、今の御指摘の御質問というのは非常に重要な問題なんですが、最近の有権者の投票行動を分析しますと、少し特徴として言えることは、自分の年齢と近い年齢の候補者に入れる傾向が強くなってきております。以前は有権者が自分の年齢よりも上の人、余り自分の年齢よりも年下の候補者には入れないという傾向がありましたのが最近少し変わってきまして、自分と同じ世代の候補者に投票するという傾向が以前から比べると相対的に強くなっているというふうに思っております。
○山下英利君
 どうもありがとうございました。
 時間ですので、これで質問を終わります。






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