「地域にとって必要な公共事業が遅れる」
県北部の町長らが5月12日、参院議員会館にある自民の山下英利(51)の事務所を訪ねてきた。
「補助金を減らさないでほしい。」不在だった山下に代わって訴えを聞いた事務員は「議員に伝えておきます」と応じた。
事務所には県内全域の自治体や各種団体の幹部らが次々に訪れる。財務省が各省庁の概算要求の査定などを進める9〜12月は、秘書が「ときに昼食を忘れる」ほどだ。しかし、たまに陳情資料を手にせず、訪れる客もいる。その後も資料を持ってこないとき、事務員は「衆院議員に頼んでいるのかな」と考えるときもあるという。
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昨年11月に衆院議員となった民主の奥村展三(59)は、参院議員だったときと陳情客の切実さが違う、と受け止めている。同じように公共事業などの陳情を受けるが、「何とか国の予算を」という陳情客の強い思いを肌で感じる。「衆院に予算の先議権などがあるからだろうか」と推測する。
ある県議は「どうしても衆院議員に比重を置いてしまう」と話す。衆院議員は選挙区内の道路や河川などの実態をよく知っているからだという。
別の県議は、大物政治家が「衆院優位」を印象づけた、とみる。県内選出の衆院議員には、元防衛庁長官の故・山下元利、元首相の故・宇野宗佑、元蔵相の武村正義(69)らがいた。「いま大物はいない。衆院も参院も差はない」と言う。
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陳情客は、県関係者とは限らない。
東京在住で、性同一性障害があるNPO代表の山本蘭(46)も、その1人だ。山本は、同じ障害のある仲間らとNPOを昨年1月に結成。戸籍上の性別変更を可能にする法律の制定などを働きかけてきた。
「当時は衆参の違いを意識していなかった。ただ、参院議員は話をよく聴いてくれた」と言う。「任期が6年あり、少数者の問題に取り組む余裕があるのかもしれない」
山下は、スイスで銀行員をしていた時、性同一性障害がある現地スタッフと仕事をした経験があった。参院議員の南野知恵子(68)=比例区=の誘いもあり、昨年2月から自民党の勉強会に参加し、当事者らの話を聴いた。法案の骨子案づくりに携わり、与党のプロジェクトチームで事務局長を務めた。
性同一性障害者特例法は、議員立法で共産などの野党も賛成して昨年7月に成立、今年7月に施行される。戸籍上の性別変更ができる対象は独身の成人とし、なりたい性にあわせた性器を設けること、子がいないことなどを条件にした。
一方、同法は付則で「施行後3年をめどに、社会的環境の変化などを勘案し、必要な措置を講じる」とした。山下は「3年後まで任期があるので、見直し作業に携わりたい」と意気込む。
今国会で、配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス=DV)防止改正法が成立し、子どもへの接近禁止が命じられることなどが新たに盛り込まれた。
改正案の骨子をまとめたプロジェクトチーム座長の南野は、3年前に成立したDV防止法を手がけた一人でもある。
山下は、南野の活動に共感を覚える。
「法案づくりに携わった議員が3年後の見直しに取り組めるのは参院議員の強みだ」
(敬称略)
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